1月16日(土)、第183回からつ塾「カズオ・イシグロにおける歴史と文学」

講師:大嶋仁(おおしま・ひとし)氏(福岡大学名誉教授)
講師プロフィール:1948年生まれ。東京大学大学院博士課程(比較文学比較文化)修了後、静岡大学、バルセロナ自治大学、ペルー=カトリック大学、ブエノスアイレス大学、パリ国立東洋言語文化学院で教鞭をとったあと、福岡大学教授(1995−2016)となる。現在は福岡大学名誉教授。主に比較文化的観点からの日本思想史、科学と文学の関係について研究している。最近の著書として、『科学と詩の架橋』(石風社2022)『生きた言語とは何か 思考停止への警鐘』(弦書房2023)『石を巡り、石を考える』(石風社2023)『森を見よ、そして木を』(弦書房2025)『日本文化は絶滅するのか』(新潮社2025)などがある。

講義概要: 古代ギリシャの哲人アリストテレスは、「歴史」よりも歴史を扱う文学のほうが普遍性をもつがゆえに「上位」にあると言った。これが正しい見解かどうかは簡単に言い切れないが、日本の戦争や戦後を扱ったカズオ・イシグロの文学作品を分析することで、この問題に答えを出してみたい。
具体的に扱うのは初期の3作であるが、とくに第1作目の『遠い山なみの光』に注目する。この作品に限らず、イシグロ作品は「人間が現実に適応するために自己欺瞞に陥ってしまうさまを如実に描いている点で価値がある」(スウェーデン・アカデミー評)のだが、特にこの第1作にそれが顕著である。この作品における語り手の無意識の自己欺瞞を追跡し、それをフロイトのヒステリー研究と比較することで、イシグロ文学の神髄に迫りたいと思う。
他の2作、すなわち『浮世の画家』と『日の名残り』については、作者イシグロが徐々に自身の心的葛藤を解消していくプロセスを追いたい。第1作目が理解できれば、この2作の理解は難くないと思われる。

日時: 令和9年1月16日(土)  15:00~17:00

会場: 唐津ビジネスカレッジ  (JR東唐津駅北側、徒歩1分)

参加費 : 1,000円(学生500円、中学生以下無料)