11月16日(土)、第165回からつ塾「春を待つこころ - 岡潔先生の数学観」
講師:高瀬正仁氏(元九州大学教授)
講師プロフィール:数学者・数学史家。昭和26年(1951年)、群馬県の渡良瀬川上流の山村(現、みどり市)に生れる。東京大学から九州大学大学院に進み、九州大学助手、講師、准教授を経て基幹教育院教授。専攻は多変数関数論と近代数学史。著作『評伝岡潔』三部作。「星の章」「花の章」(ちくま文庫)、「虹の章」(テコム)。
講義概要: 紀州和歌山の数学者・岡潔(おか・きよし)先生は西欧近代の数学を学び、生涯を通じて10篇の論文を書きました。わずか10篇ですが、彫心鏤骨の傑作が重ねられて、数学そのものの姿を大きく変容させるほどの衝撃を世界の数学界にもたらしました。ところがその岡先生は第10番目の論文に序文を寄せて、極端な抽象に向う近年の数学の傾向に対し、日本人に固有の感情の季節感に訴えてまるで冬景色のようだと嘆き、春の再来を待ち望む心情を吐露しました。第10論文は、春の気配を感じさせる論文を書きたいという切実な思いに支えられて執筆されました。明治のはじめ、日本は和算を放棄して全面的に洋算を受容する方針を定め、岡先生の研究はその流れの中に現れましたが、岡先生の数学観には和算の心が色濃く投影されているように思います。和算と洋算の対比、急速に終焉に向った和算の運命、西欧近代の数学を日本で学ぶことの意味、数学という学問そのものの変容という現象、それに岡先生の心にくっきりと描かれているかつて確かに存在した春の日の数学の光景について、岡先生の言葉に手掛かりを求めて考えてみたいと念願しています。
日時: 令和6年11月16日(土) 15:00~17:00
会場: 唐津ビジネスカレッジ (JR東唐津駅北側、徒歩1分)
参加費 : 1,000円(学生500円、中学生以下無料)