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「願望実現医療――医療の変貌」

  • 開催日時:平成22年11月15日(月)午後7時〜午後9時
  • 開催場所:唐津ビジネスカレッジ(JR東唐津駅前)
  • 参加費:2,000円(大学生以下1,000円)

講義要旨

病に苦しむ病者は,医療者に助力と治療を求める。
医療者は,その知識と技能のかぎりを尽くして,病者の求めに応えようとする。
治療は医療の本来の目的である。
医療者には,病める者が治癒するために全力を尽くすという義務がある。
これは古今東西の医の倫理のなかに共通して見出される。
しかし,いま医療のこうした伝統的な理解は揺らぎ始めている。
美容外科手術や生活改善薬(ライフスタイル・ドラッグ)の流行など,病気の治療とは言えないような新しいタイプの医療がさまざまな分野に登場し,拡大しているからだ。

病気の治療ではないが,「メイクのように気軽なプチ整形」も医療として行われている。
若返りや若さを保つためのアンチエイジングにも医学の知と力が用いられている。
子を産まないための経口避妊薬(ピル)は医療用医薬品であり,医師によって処方される。
他方,子を産むための生殖医療も医師が行う。
「不妊治療」とも呼ばれるが,子を望まない人には,治療の必要はないし,不妊の人をすべて「病人」と呼ぶことには違和感がある。
不妊症でもないのに,男女産み分けのために,体外受精という医療技術を用いることが米国で広がっているが,これも治療とは言い難い。
産むか産まないかを含めて生殖をコントロールすることは「治療」というよりも,全体として見れば,願望を実現する医療である。

こうした医療は,従来の「治療型医療」と対比して,「願望実現医療」と呼ばれ,次のように定義される。

心身の改良や変容のために,あるいは生活の都合や改善のために,医学的知識と技術を,医学的な適応もないのに用いること。

人間にとって病気が「不滅」である以上,治療型医療も不滅で,今後も発達し続けていくであろう。
他方で,病気の治療という医療の本義から逸れた願望実現医療もますます隆盛をきわめていくだろう。
これは医療の脱中心化である。
医療のこの本質的な変容,この構造的変化の意味について,包括的な検討はまだほとんどなされていない。
願望実現医療の隆盛は医療のあり方をどう変えるだろうか?
医療文化の変容という視点から考えてみたい。

講演では,まず,
1. 医療の本質についての伝統的な理解(治療型医療の倫理)を確認した上で
2.いま願望実現医療がどんな広がりを見せているかを概観し
3.伝統的な医療(治療型医療)と願望実現医療とを,下表のような対比で,それぞれの特徴をとらえ,
4.願望実現医療をどう評価し,それにどう向き合っていくかについて考えてみたい。

講義風景


松田純先生講義「願望実現医療――医療の変貌」

松田純先生と質疑応答の様子

松田純先生を囲んで記念撮影

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